April 10, 2026·Engineering·6 min read

ドメインは Cloudflare が最安 — マージンを払う必要はない

個人ドメインを10本近く管理して気づいた、他社と Cloudflare の価格差の正体。安いのではなく、マージンを取っていない。同じ構造が米中のAIの価格差でも起きている。

ドメインは Cloudflare が最安 — マージンを払う必要はない

ドメインを取るとき、どのレジストラを選ぶか。この3年で5社ほど使い比べた結果、 結論は一つだけ残った。価格だけで見ると、Cloudflare Registrar が最安になる

そして、それは Cloudflare が頑張って安く売っているからではない。 他社がマージンを取っているのに対して、Cloudflare は取っていないだけ。

年間費用の内訳

ドメインの年間費用は、ざっくり3つの要素でできている。

  1. レジストリ(.com なら Verisign、ICANN 手数料含む)への 卸値
  2. 認証・運営・サポートの 実費
  3. レジストラの マージン

一般的なレジストラはここに数百円〜数千円を上乗せする。 「初年度 $1.99 → 翌年から $19.99」のような価格は、 初年度だけマージンを削って集客し、翌年から回収する設計

Cloudflare の立ち位置

Cloudflare はドメインを at-cost(原価販売)で提供している。 マージンを乗せず、卸値と実費だけで売っている。

理由は単純で、Cloudflare の本業はネットワーク・セキュリティ・CDN・Workers であって、 ドメイン販売は「入口」の位置づけだから。 ドメインで儲ける構造になっていない。

これって他のツールでもよくあることで、 メイン事業ではないから安く売ってくれているというのはザラにある。

同じ構造が、米中のAIでも起きている

この「本業じゃないから安い」は、今のAIの価格差でも同じことが起きていると思う。

OpenAI や Anthropic にとって、モデルそのものが商品になる。 研究に金をかけ、その回収をAPIの単価とサブスクでやる必要がある。 モデルで儲けないと事業が成立しない。

中国側は事情が違う。DeepSeek や Qwen、Kimi が モデルを安く出したりオープンウェイトで配ったりしているのは、 善意でも純粋な技術デモでもなく、そこが回収ポイントではないからだと見ている。

回収する場所が別にある。端末やクラウド、EC、決済、あるいは 「西側の標準を取る」という国家レベルの目的まで含めて、 モデルは入口の位置づけになる。Cloudflare がドメインでやっていることと構造は同じで、 入口を原価で配って、その先で回収する。

だから安さを見たときに「頑張って安くしてくれている」と受け取るのは間違いで、 その会社にとってどこが回収ポイントなのかを見たほうが早い。 安いものには理由があるが、その理由は「品質を削った」とは限らない。 自分がその回収構造の中で、どの位置に立たされるのかのほうが問題になる。

ドメインなら、入口として使われても実害はほぼない。DNS を握られるだけで、 中身は自分のサーバーにある。乗り換えも移管でいつでもできる。 一方でAIは、コードも文章も社内の判断も通していくことになる。 同じ「入口だから安い」でも、預けているものの重さが違う。

安いこと自体は悪ではない。実際に僕もどちらも使っている。 ただ、安い理由を「親切」だと勘違いしたまま乗るかどうかは分かれ道になると思う。

実際の差

.com ドメイン1本を 5 年持ったときの比較(2026年時点の参考価格):

Cloudflare Registrar

卸値そのまま(マージンなし)・ドル建て請求

初年度
約 ¥1,660($10.44)
2年目以降
約 ¥1,660($10.44)
5年合計
約 ¥8,300($52.20)

国内レジストラA

初年度だけ大きく値引く型

初年度
¥99($0.62)
2年目以降
¥3,980($25.03)
5年合計
¥16,019($100.75)

国内レジストラB

初年度から更新まで一定

初年度
¥1,580($9.94)
2年目以降
¥1,580($9.94)
5年合計
¥7,900($49.69)

海外レジストラC

初年度だけ大きく値引く型・ドル建て請求

初年度
約 ¥157($0.99)
2年目以降
約 ¥3,178($19.99)
5年合計
約 ¥12,871($80.95)

1ドル159円で換算(2026年8月)。「約」はドル建て請求のため為替で動く。

見るのは初年度ではなく 2年目以降の列になる。 初年度の ¥99 や ¥157 に釣られると、更新のときに ¥3,980 や ¥3,178 が毎年出ていく。 5年合計で並べ直すと、初年度の安さは順位をひっくり返さない。

AやCの2年目以降と Cloudflare の差額は、そのままマージンになる。

Bのように初年度から更新まで一定で出しているところもある。 ただこの水準は .com の卸値(約¥1,660)を下回っているので、 キャンペーンや他のサービスとの抱き合わせで成り立っている価格だと見たほうがいい。 更新のたびに同じ額で続くとは限らない、という前提で見ることになる。

結局のところ、確認するのは更新時にいくら請求されるかの1点になる。

価格以外の副次的メリット

価格構造だけでも乗り換える価値は十分あるが、周辺の便利さもついてくる:

  • DNS 管理が同じダッシュボード(ドメインと DNS を別会社で持たなくていい)
  • HTTPS 強制・DDoS 対策・WAF の基本機能が 追加料金なし
  • CDN を有効化すればエッジ配信も同じ画面で完結

DNS は、ドメイン名と、実際のサーバーの住所をつなぐ対応表のこと。 「この名前で来たらこのサーバーへ」を書いておく場所で、 ドメインを買った会社と別のところで持つこともできる。同じ画面にあると往復が減る。

個人が5本10本とドメインを持つとき、管理画面の行き来がないだけで 体感ストレスがかなり減る。

向かない場合

  • 日本の .jp ドメインは扱っていない(2026年時点)
  • 法人でインボイス・請求書要件がある場合は国内レジストラが必要
  • 他社からの移管時はロック解除と AuthCode の取得が前提

最後の1行だけ補足すると、移管は今の会社の管理画面から始める。 勝手に持ち出されないようロックがかかっているので、それを外して AuthCode(移管用の暗証番号。会社によって認証鍵・Auth Info とも呼ぶ)を表示させ、 移管先に貼る。

注意したいのは、移管の前に DNS の設定を移しておくこと。 Cloudflare の場合は先に DNS を預ける手順になっていて、 ここで今の設定が正しく写っているかを自分で確認しないと、 サイトやメールが落ちる。移管そのものより、この確認のほうが本番になる。

結論

「ドメインが安いレジストラ」ではなく、「マージンを取らないレジストラ」 として Cloudflare を捉えると、選択の理由がクリアになる。 個人利用で、この構造に乗れない理由を探す方が難しい。