体重・食事・筋トレを記録する個人ダッシュボードを作ったことがある。 グラフも、月次サマリも、種目ごとのベスト記録も載っている。UIは綺麗だ。
それでも、続かなかった。
理由は単純で、自分で開いて入力するのが面倒だったから。 ジムの帰り道、スマホでアプリを開いて、種目を選んで、重量と回数を打ち込んで、保存。 1回1分かからない作業だけど、その1分を「やらない理由」が毎日見つかる。
ある日、入力UIを自分で作るのをやめた。 Claude.ai を入力役にする設計に切り替えた。続いた。
何を変えたか
ダッシュボード本体(表示するアプリと、データを溜めるデータベース)はそのまま残す。 表示用としては優秀だ。 データを書き込む経路だけを、Claude.ai 経由に置き換えた。
仕組みとしては、Claude が外部のツールを呼べる仕掛け(MCP と呼ばれる)を使って、 「体重を記録する」「食事を記録する」「筋トレを記録する」というツールを データベースの前に置いた。Claude.ai に話しかけた内容が、 そのままツールの呼び出しに変換されて、データに入る。
これで何が起きるかというと、 Claude.ai に「今日 72.3kg だった」と話せば、自動で記録される。 「昨日の胸トレ、ベンチ60kgを8回、3セット」と話しても、同じように入る。 自分でフォームを開く必要が、無くなった。
効いたのは「UIを作らない」ことだった
ここで気づいたのは、個人開発で一番作るべきじゃないものは入力UIだということだった。
入力UIは作るのが楽しい。入力欄、エラー表示、補完、デザイン。触りがいがある。 でも、自分が毎日使う側になると、その「触りがい」がそのまま摩擦になる。 自分のためのアプリで、フォームを開くこと自体が摩擦になる。
Claude.ai は摩擦が低い。アプリを開く必要すらなくて、もう開いている。 そこに自然な言葉で話せば書き込まれる、という設計は、 「使う」と「使わない」の境界を下げる効果がいちばん大きい。
もちろん、UIを作り込むこと自体を否定したいわけじゃない。 すでに使い始めたユーザーの継続率を上げるために UI を磨くのは、明確に正解だと思う。 表示の見やすさ、操作の手応え、戻ってきたくなる雰囲気。これらは UI でしか作れない。
問題は、自分1人しか使わないアプリで、まだ続いてもいない段階で UI を丁寧に作ること。 それは続けるための手段ではなくて、作ること自体が目的化している。 入力UIに凝るのは、ユーザーがついてからでいい。
UIを綺麗に作るより、UIを作らない方が続く。 そして続いた後に、UIを綺麗にすればいい。
振り返りも同じ場所でできる

書き込むだけじゃなくて、読み出すツールも一緒に置いた。 「先週と比べてどう?」「今月一番重いベンチは?」と Claude.ai に聞くと、 裏でデータベースを引いて、答えを返してくれる。
入力も振り返りも、同じ場所で完結するのが、思った以上に良かった。 記録するついでに「最近どう?」を聞ける。 わざわざダッシュボードを開かなくても、調子の手応えがその場でつかめる。
残ったダッシュボードの役割
入力を Claude.ai に任せた結果、ダッシュボード本体は 「眺める専用」 になった。 週末にコーヒー飲みながら開くと気持ちいい、そういう場所。
入力と表示を 同じ画面に詰め込む必要がなくなった のが大きい。 入力はAI、表示はウェブ、データはデータベース。 それぞれに「向いている仕事」だけをさせる構成になった。
結論
個人開発が続かない時、機能を増やす前に 入力の手間 を疑った方がいい。 入力が面倒なアプリは、機能を増やしても使われない。
逆に、入力さえ摩擦ゼロにできれば、続く。 そして Claude.ai のような「すでに開いている AI」を入力役にするのは、 個人開発との相性が信じられないくらい良い。
同じ場所で詰まっていたら、入力をAIに渡してみてほしい。 自分のためのプロダクトが、自分の中で初めて生きている感覚になる。